こんにちは。久々のブログ更新となります。今日は,先日から何件か質問が寄せられていましたので,そのことについて少しだけ詳しく解説しておこうと思います。
(質問)初乳中に含まれる免疫グロブリンはIgAじゃないの??
「初乳」ってなに?
初乳とは,分娩直後から数時間~数日間にだけ分泌される特別な乳汁のことです。初乳は,母乳とは成分が異なり,特に『抗体』を多く含むことが特徴になります。この抗体は母親から子に伝わる初期の免疫で,『移行抗体』と言います。初乳は,通常乳より濃厚でやや黄色を呈しています。
この初乳に含まれる抗体には,IgG,IgA,IgMが多く含まれることが分かっており,動物種によりその含有量に差があります。この差は,動物毎の胎盤の構造の違いにより,胎仔期に胎仔に移行できる抗体(IgG)の量に差があるためと考えられています。
母子免疫
母子免疫とは,新生仔期における感染防御機構のことで,免疫が不十分な新生仔で母親から譲り受ける抗体により行う免疫反応のことです。この母子免疫には特にIgGが重要な働きをします。母親からのIgGの受け取り方は次の2種類があります
① 胎盤を介しての移行 , ②初乳を介しての移行
これは動物種によって違い,その違いは先ほど書いた様に胎盤の構造の違いにより移行できる抗体の量に差があるからです。
動物種毎の胎盤の違い
動物種により,胎盤の構造は異なります。愛玩動物看護師国家試験でも出題される可能性がありますので,少しまとめておきます。
イラストのように,胎盤は動物により4種類に分類されます。
胎盤の構造の違いと移行抗体の量
胎盤は,母親側の胎盤構造と胎仔側の胎盤構造が接触して血液をやりとりすることで栄養素や老廃物などをやりとりしています。この結果,移行抗体(IgG)のやりとりのしやすさも異なる事になります。
胎盤の種類 | 動物種 | 胎仔期の抗体移行 | 出生後の初乳中の抗体量 |
散在胎盤 | 馬,豚 | – | +++ |
多胎盤 | 牛,羊 | – | +++ |
帯状胎盤 | 犬,猫 | + (約5-10%) | ++ (90%以上) |
盤状胎盤 | ヒト,サル,ウサギ | +++ | ± |
表の様に,胎仔期に抗体が移行できる動物は初乳中にはIgGはそれほど多くなく,IgA(粘膜免疫に関与)を多く含むことになります。一方で,馬や牛などの動物は胎盤の構造の違いからIgGはほとんど胎盤を介して移行できません。そこで,初乳中からほぼ全ての移行抗体(IgG)を受け取ることになります。
まとめ
以上の内容を表にまとめておきますので参考にしてみて下さい。
動物種 | 胎盤の種類 | 胎仔期の移行抗体(IgG)の量 | 出生後の初乳中のIgG | 初乳中のIgAの量 |
馬,豚 | 散在胎盤 | – | +++ | + |
牛,羊 | 多胎盤 | – | +++ | + |
犬,猫 | 帯状胎盤 | + (約5-10%) | ++ (90%以上) | + |
ヒト,サル,ウサギ | 盤状胎盤 | +++ | ± | +++ |
(答え)犬や猫では,初乳中に含まれる免疫グロブリンはIgGになります。ただし,初乳中にIgAが多く含まれる動物はヒトになります。
【教科書的根拠】緑書房 動物看護の教科書(新訂版)第1巻 P196
第4章 ④ の記述
動物種によって,新生児の移行抗体の受取方が異なっています。その理由は,胎盤の構造が異なることに由来しています。例えば人では,ほぼすべての移行抗体が胎盤を介して胎児に移行するのに対して,犬猫では,胎盤を介して得られる移行抗体は約5~10%のみで,90%は初乳から獲得します。
生後一週間以内に分泌される母乳は初乳といい,濃厚でやや黄色を呈しています。初乳はエネルギーや栄養が豊富で多くの抗体(免疫グロブリン「とくにIgG」)を含んでいます。新生児の小腸粘膜には,免疫グロブリンを分解することなく吸収する能力,すなわち,腸上皮から吸収し血管に送り込む能力があります。これは,生後8時間以上では50%以下に低下し,24時間以上経過すると吸収できなくなる。
上記のような記述があることからこの部分を図と動物種の比較ということで調べてまとめました!
コメント
いつも分かりやすい授業を、ありがとうございます。
寺子屋の見逃し配信なのですが、7回目の動画を見ようとすると、4回目の動画が流れてしまうのですが、7回目はどこで見られますでしょうか?
お忙しい中、大変申し訳ありません。宜しくお願い致します。